ドキュメンタリー映画の部屋inアジア

アジアのドキュメンタリー映画専門チャンネル「アジアンドキュメンタリーズ」配信作品の感想を綴っていきます。

地雷ときどき僕。

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地雷ときどき僕。 2016年製作/カンボジア/作品時間60分

 今回紹介する作品は、特集【悪魔の兵器】より、「地雷ときどき僕。」です。

作品概要

 カンボジアでは、かつて激しい内戦がありました。タイとの国境付近にあるタサエン地区には、内戦の時代に埋められた地雷と、ともに生きる人々がいます。地雷原の隣で暮らす子供たちや、地雷の除去活動に勤しむ地元の人々、そして、15年間にわたりカンボジアのために活動する一人の日本人の姿を通して、カンボジアのありのままの姿が見えてきます。ひたむきに生きる人々の、温かさの詰まった作品です。

見どころ

「地雷原に入ってはいけません」

 地雷の歴史を知らない子供たちには、大人がそんな風に言ってきかせるのです。タサエン地区には、これまでにも地雷の被害に遭った人々がいます。同じ目に遭う人がもう出ないでほしいと、両足を失った男性は語ります。危険と隣り合わせの日々とは裏腹に、子供たちの笑顔は無邪気で、それは、運命の不条理さを示しているようにも、明るい未来の象徴のようにも思えます。

安全なふるさとのために

 地雷原で除去活動に取り組む、地元の若者たちがいます。彼らは、デマイナー(地雷探知員)としての訓練を受け、日々、除去作業に勤しみます。地雷原での作業は危険を伴い、過去には大きな事故で命を落とした人もいます。それでも、彼らは安全なふるさとを取り戻すため、村の人々の思いを糧に、今日も地雷の除去に取り組むのです。

カンボジアを元気にする日本人

 カンボジアで長年、地雷処理、地域復興支援を続ける日本人がいます。高山良二さんです。自衛官として参加したカンボジアPKOをきっかけに、カンボジアに特別な思いを抱くようになった彼は、地雷除去活動にとどまらず、教育や雇用の問題にも取り組み、村の暮らし全体を豊かにするため、日々奔走しています。カンボジアの人々について語る高山さんの表情は、慈愛と使命感に溢れています。

 

 本作品で紹介されてる高山さんは、地元の人々から「ター」と呼ばれて慕われています。「ター」とは、カンボジアの言葉で、親しみを込めて「おじいさん」と呼ぶ言葉だそうです。高山さんと彼らの間に、国境はありません。

 高山さんの姿を見て、誰かのために尽くすこと、奉仕することは、幸せなことなのだと、気づかされました。

 「生きる意味」を見出すのが難しい社会で、明日を前向きに迎えられる力を分けてくれる、そんな作品です。

 

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