ドキュメンタリー映画の部屋inアジア

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革命の子どもたち

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革命の子どもたち 2011年製作/レバノン・ヨルダン・ドイツ・日本/作品時間88分

 今回紹介する作品は、特集【戦う女たち】【流転の人生、その先に】より「革命の子どもたち」です。

作品概要

 1968年、資本主義社会の打倒を目指す革命運動の渦中に、二人の「女性革命家」がいました。日本赤軍重信房子と、ドイツ赤軍のウルリケ・マインホフです。この作品は、二人の娘である重信メイとベティーナ・ロールが、母親と自身の人生を辿り、母親が目指した「革命」とはなんだったのか、斬新な視点で読み解いてゆきます。テロリストとして歴史に名を残した彼女たちの、知られざる母親としての素顔に迫る作品です。

見どころ

生きた「革命」の記憶

 「あのころ」の熱気は、現代社会では感じることのない独特のものです。学生運動や革命に若者が熱狂した時代を、最前線で戦う革命家の子どもとして生きた二人の言葉は、歴史の教科書のような色褪せたものではなく、生々しい、臨場感溢れるものです。そして、社会に憤り、未来を変えようと戦った人々がいた世界は、間違いなくこの世界と繋がっていることに気づかされます。

母と子、それぞれの想い

 女性革命家として、戦いの最前線にいた彼女たちは、母親であることを忘れることはありませんでした。子どもがいることは、決して弱みではなく、彼女たちが強くあるための力の源だったのかもしれません。そして、子どもたちもまた、過酷な運命に左右されながらも、それを呪うことはしませんでした。子を想い、それでも戦う母親と自分の人生から目を背けずに向き合い続けた彼女たちからは、大きく、深い愛を感じます。

 

 革命とは、矛盾を抱えたものだったように思えてなりません。社会を憂い、隣人を苦しみから救うために立ち上がったはずの人々が、誰かを傷つけ、時に命まで奪ってしまうことになってしまったのです。

 そして、世界では今もなお、テロや戦争が続いています。それは、人間という存在自体が、矛盾に満ちたものだということを意味しているのではないでしょうか。

 この作品は、私たち人間の、その内包する矛盾との戦いを描いたものです。

 これは、懐かしい「あのころ」の物語ではありません。私たちの、矛盾との戦いは、あのころから、今も、そしてこれからも、続いてゆくのですから。

 

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