ドキュメンタリー映画の部屋inアジア

アジアのドキュメンタリー映画専門チャンネル「アジアンドキュメンタリーズ」配信作品の感想を綴っていきます。

世界に伝える ウイグル族強制収容所

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世界に伝える ウイグル族強制収容所 2019年製作/中国・オーストラリア/46分

 今回紹介する作品は、特集【人狩りの実態】より「世界に伝える ウイグル族強制収容所」です。

作品概要

 この作品は、中国・新疆ウイグル自治区で、徹底した文化的ジェノサイド政策が行われている実態を浮き彫りにするドキュメンタリーです。オーストラリアで暮らすウイグル人たちが語るのは、家族と会うことも許されず、想像を絶する人権侵害に苦しみ続けているという、悲痛な叫びでした。中国政府による厳しい情報統制下で、リスクを冒して続けられた取材、研究者たちの検証に加え、独自に入手した収容所内部の映像も公開し、中国で今も続く「人狩り」の実態を、世界へ発信します。

見どころ

「家族に会いたい」ウイグル人の生の声

 オーストラリアに暮らす多くのウイグル人は、家族を中国に残したまま、会うことや電話をすることが許されずにいます。あるウイグル人の男性は、妻の産にも立ち会えず、2歳になる息子とは一度も会えずにいるといいます。悲しみに暮れ、「何も楽しくない」と語る彼らの、生の声を聴くことで、ウイグル族弾圧による被害の残酷さを、現実のものとして感じることができます。

「世界最大の刑務所」の実態

 中国政府による文化的ジェノサイド政策により、新疆ウイグル自治区は「世界最大の刑務所」となっています。そこでは、徹底した「人間の管理」と、文化の破壊が行われていました。また、家族と分断された子供たちは、中国化するための再教育を受けさせられるのです。この作品では、ウイグル族を根絶やしにしようとする中国政府の弾圧の実態を、細部まで徹底的に捉えています。

 

 民族弾圧は、ナチスドイツのユダヤ人虐殺をはじめ、これまでの人類の歴史でたびたび行われてきた悲劇ですが、中国・新疆ウイグル自治区では、それが今もなお続いているのです。

 この作品は、そんな巨悪に立ち向かうべく、証言者、取材者が身の危険を冒してでも世界に伝えなければならなかった思いの結晶です。

 この問題は、私たち一人ひとりが考えなければならないことだと思います。人権侵害という敵に打ち克つには、より多くの人々が、問題意識を持って団結することが必要不可欠だからです。

 過去の悲劇が繰り返されていると書きましたが、過去とは違うこともあります。情報ツールが多様化した現代では、このページで紹介しているドキュメンタリー作品のように、統制されていない情報を、私たち一人ひとりが受け取ることができます。知らないことの延長線上にあった悲劇を、現代に生きる私たちは防ぐことができます。

 彼らが必死の思いで発信したメッセージを、あなたも受け取ることができるのです。

 

「世界に伝える ウイグル族強制収容所」は、アジアンドキュメンタリーズで配信中です↓

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