ドキュメンタリー映画の部屋inアジア

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輪廻の少年

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輪廻の少年 2017年製作/インド/作品時間95分

 今回紹介する作品は、特集【視聴率ベスト20】でトップを獲得した「輪廻の少年」です。

作品概要 

 インド北部のラダック地方で、リンポチェ(チベット仏教の輪廻転生の高僧)となった少年と、彼の世話役を務める僧侶との心あたたまる純粋な絆を描いた作品。リンポチェの少年の葛藤と成長、それを温かく見守る僧侶の愛情に、心洗われること間違いなしです。雄大な自然の中で、運命に左右されながら、力強く生きる彼らの姿は、私たち自身の生き方にもエネルギーを与えてくれるでしょう。

見どころ

リンポチェの少年の二つの顔

 少年は幼くして、チベット仏教の輪廻転生の高僧「リンポチェ」であると認められました。高僧とはいうものの、彼はあくまでも幼い少年です。学校へ行けば、仲間の子供たちと同様に無邪気で、弾けるように笑ったり、くしゃくしゃになって泣いたりします。しかし、袈裟を身に纏い、祭りに現れた少年は、神聖さすら感じさせる真っ直ぐな瞳で人々を見つめるのです。一体何が、彼に、このような表情をさせるのだろうか。その光景に、宗教がもつ神秘を感じざるを得ません。

世話役の僧侶の愛情

 少年は、世話役を務める初老の僧侶と暮らすことになります。少年のために働き、経典を教え、共に暮らす僧侶の表情は、とても穏やかです。楽しいときも、苦しいときも、少年を見守ることができる幸せを噛みしめているような彼の姿からは、限りなく純粋な、無償の愛が伝わってきます。人を想うことの幸せと、いつまでも続くことのない儚さを感じさせる少年と僧侶の関係に、胸を打たれ、心が洗われます。

「リンポチェ」という生き方、葛藤、成長

 リンポチェとしての力を失いつつある少年のため、僧侶は少年を連れてチベットにあるという前世の寺を目指し、インド横断の旅を始めます。自分は偽物かもしれない、役立たずかもしれない、という葛藤を抱え、旅をすることで知らなかった社会に触れた少年は、自分の人生に向き合い、成長していきます。二人は、チベットに辿り着くことが出来るのでしょうか。そして、旅の結末は――

 

 少年の人生は、リンポチェとなったことで劇的に動き出しました。少年がなぜ、リンポチェになったのかは、誰にもわかりません。しかし、少年は自分の人生に向き合い、その上で、「より良いリンポチェ」になるための道を進もうとするのです。「前世」に振り回されるのではなく、彼は力強く自分の人生を歩んでいます。

 彼の、そしてラダックの人々の生き様を目の当たりにして、ふと自身の生き方を顧みると、心の奥底から、ふつふつと湧き出てくるエネルギーを感じることができるでしょう。

 

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