ウォーナーの謎のリスト【日本初配信】
今回紹介する作品は、特集【戦争の記憶】より、「ウォーナーの謎のリスト」です。
作品概要
「ウォーナー・リスト」とは、アメリカの美術史家であるラングドン・ウォーナーが、太平洋戦争当時、日本の文化財が失われることを懸念し、151か所をリストアップし、爆撃を避けるよう求めたものです。また、大空襲で焼け野原となった東京で、神田神保町の古書店街が燃えなかったことは、ロシア人の学者で日本に縁のあったセルゲイ・エリセーエフの進言によるものともいわれています。本作では、戦争における文化財保護という視点から、ウォーナー、エリセーエフの二人を中心に、当時を生きた人々の足跡をたどり、太平洋戦争の知られざる舞台裏を解き明かしてゆきます。
注目のポイント
文化財の保護に一生を捧げた男
ラングドン・ウォーナーは、当時のアメリカにおける日本美術史の第一人者でした。彼は、重要な文化財の価値を見出す能力に長けていたとされ、戦前には日本でも美術を学んでいました。彼の「文化財を完璧な場所で保護する」という思いはとても強く、ボストン美術館での師・岡倉天心に「天狗のような傲慢さ」と批判をされ、袂を分かつことになります。そんな彼が、一生をかけて守ろうとした日本の文化財が、人類にとっていかに価値のあるものであるか、彼の一生を追うことで、再認識することができます。
古書店街はなぜ燃えなかったのか
神田神保町は、約180の古書店が並ぶ世界一の古書店街です。この場所が戦火を免れたのは、親日家で、夏目漱石などとも親交のあったロシア人・エリセーエフが、マッカーサーに進言をしたからだと、司馬遼太郎の著書「街道をゆく」に書かれています。本作では、多くの歴史家への取材や、米軍側の資料を紐解き、この説を検証していきます。そして、エリセーエフが、戦争へ向かう当時の日本をどのように見ていたのかが浮かび上がってきます。
日米開戦を回避せよ!
ウォーナーがリストを作成することができたのは、彼と親交が深かった、歴史家・朝川貫一の影響が大きかったといわれています。朝川は若くして渡米し、戦争へ向かう日本を「狂い始めた」と感じていました。そして、ウォーナーと共に、日米開戦を回避するべく奔走します。本作の後半では、日米開戦を避けるための「天皇と大統領が直接親書を交わす」という大胆な作戦の一部始終を描きます。そして戦後、文化財保護の英雄として持ち上げられることを嫌った、ウォーナーの心の内を解き明かします。
私たちの生活は、先人たちの知恵の積み重ねで成り立っています。つまり、歴史から、過去から学ぶことが、未来を発展させる唯一の方法です。
しかし、現在もなお、世界中で戦争や破壊行為によって、貴重な文化財が失われています。これは、私たち人間の進歩そのものを否定することに他なりません。
ウォーナーが感じていた、文化財が持つ価値を理解すれば、「ウォーナー・リスト」が持つ意味も見えてくるでしょう。
そして、彼が未来を見据えて成し遂げた仕事を、次の未来へと引き継ぐのは、現代を生きる、私たちの使命ではないでしょうか。
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