ドキュメンタリー映画の部屋inアジア

アジアのドキュメンタリー映画専門チャンネル「アジアンドキュメンタリーズ」配信作品の感想を綴っていきます。

ナーガ 永遠のヨギ

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ナーガ 永遠のヨギ 2016年製作/インド/作品時間72分

 今回紹介する作品は、特集【ヨーガの世界】より「ナーガ 永遠のヨギ」です。

作品概要

 ヨーガを行う者を「ヨギ」といいますが、インドで極限のヨーガの実践に人生を捧げる人々がいます。禁欲主義を徹底し、衣服すら放棄し、瞑想に勤しむ彼らは「ナーガ」と呼ばれ、古来よりインド、ヒンドゥー教の世界で聖者として伝承される存在です。彼らはなぜ、全てを捨て、あまりにも過酷な修行にその身を捧げるのでしょうか。数千年の歴史を持つヨーガの世界に生きる人々を、迫力ある映像で描いたドキュメンタリーです。

※作品中に全裸の修行者が登場しますが、作品の意義や作家性を尊重し、映像を修正、改変することなく配信しています。(アジアンドキュメンタリーズ公式ホームページより)

見どころ

ヨーガの世界観

 ヨーガとは、内省を極めることだといいます。自分の中に宇宙を見る、という言葉が印象的でしたが、自分という存在をとことん見つめることで、自分を理解し、世界を理解することができるのです。また、彼らは身体に灰を纏い、「自分に星を着せる」ことで、全てから護られるというのです。修行に勤しむ彼らの姿は、とても神秘的で、これまでヨーガの世界を知らなかったとしても、何か不思議な力を感じることができます。

あまりに衝撃的な苦行

 私たちが普段耳にする「ヨガ」というものは、スポーツや健康促進的な意味合いの活動であることがほとんどです。しかし、「ナーガ」と呼ばれる修行者たちの「ヨーガ」は、それとは全く異なる、過酷なものです。片腕を挙げ続けて爪が伸びっぱなしになっている者や、12年間ずっと言葉を口にしない者など、あまりに衝撃的な苦行を続ける彼らの姿に、唖然とするに違いありません。

伝承される「ナーガ」

 「ナーガ」の修業は、口承によって受け継がれてきました。そのため、師弟の絆は固く、彼らは「共鳴」するのだといいます。また、インドでは義務教育の代わりに寺院に子どもを預け、神聖な伝承を学ばせることが認められています。服を着ないことが違法であるにも関わらず、全裸の修行者は受け入れられています。このように、インドでは今も脈々と、ヨーガの世界観、そして「ナーガ」という聖者の存在が伝承されているのです。

 

 ヨーガは、「全体の崇拝」であるといいます。内省を重ね、自分を見つめることで、自分と世界の連帯を感じます。そして、肉体を超越した世界で、種族、性別、年齢といった障壁を超え、人間全体でひとつの存在であると理解するのです。

 多様性が叫ばれる社会で、私たちは様々な問題に直面しています。人間は自らの感情に支配されやすい存在です。全ての人類が「ナーガ」のような修行者になることは難しいですが、彼らの生き様を見ることで、自分がいかに小さな世界でもがき苦しんでいたのかを知ることができます。そして、広い世界を知ることは、小さな違いを持つ隣人を受け入れることに繋がるはずです。

 目を閉じて、自分の中に広がる「宇宙」を見つめてみてください。それは、修行には遠く及ばずとも、意味のある行為です。なぜなら、純潔な彼らも、私たちも、同じ人間なのですから。

 

「ナーガ 永遠のヨギ」はアジアンドキュメンタリーズで配信中です↓

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